【How to 音色コピー】Tak氏の音色、音作りをコピーするポイントは?(メイン歪 / バッキング編)
こんばんは、ひいろです。
前回は、Tak(B’z 松本孝弘)氏のELEVEN時代のPeaveyの音色を、同じ機材を揃えずにコピーする手法をご紹介しました。
【How to 音色コピー】B’z 『ELEVEN』のTak(松本孝弘)氏の音色コピーにチャレンジ!
そこで今回は前回までの総括を含め、Tak氏のメイン歪 / バッキングの各音色(ROCKMAN、Peavey、Bogner)を、同じ機材を揃えず年代別にコピーするポイントを紹介します。
・本記事紹介のプリセットは、下記よりダウンロード可能です。(2020/4/25 追記)
B’z メイン歪 (Axe-FxⅡ)プリセット
(画像等は準備でき次第、順次追加していきます)
本記事の背景、目的
【Takトーン実現に向けて】
・以前似たような事を記載しましたが、使用機材を知るのが目的ではなく、「ライブで如何にTakトーンを実現するか」というアプローチを本ブログでは目指しています。そこで、これからの音色コピーにあたり「どうすれば、(Tak氏と同じ機材を揃えるのではなく)ライブハウスによくある機材や、市販機材でTakトーンを実現していけるか」という点を確認します。
・先ずメイン歪 / バッキングトーンから始めた理由は、ソロ用の音色はメイン歪からの応用のため、最初は基本から抑えるべきという考え方からです。
【同じ機材を揃えるのは難しいけど、音色コピーしたい】
・Tak氏の使用機材記事を掲載してきましたが、どんな機材を使っていたかを知ることが出来ても、同じにする事は中々難しいかと思います。当時の機材は中古市場にも中々良い状態のが出てこないですし、お金の問題や仮に揃えられても設定や弾き方等を詰める必要があります。それが中々出来ないから皆色々試行錯誤しているわけで、出来ていたら皆さんも苦労しないと思います…。
・それならば、出音そのものにフォーカスした方が手っ取り早いとの観点から、「音色 = 波形」に着目することで"同じ機材を揃えず"に音色コピーに取り組んできました。もちろん弾き方にも依りますが、やはりJC-120単独でBogner歪は無理かと思います。
音色の傾向と特徴
【分析】
・早速ですが、メイン歪 / バッキングの音色において傾向や特徴を解りやすくするために、ROCKMAN、Peavey、Bognerを同一のグラフ及び数値で表示しました。
※TMG及びNEW LOVE時のデータを追記しました。(2020/4/19 追記)
・上記図及び数値より、共通して下記特徴が見られます。
・全体傾向:中低域から1箇所かつ中域600Hz辺りをピークとし、高域は各年代でバラバラだが、およそ4kHzまででバランスを確保(5KHz以降は大抵落ちてる)。
・低域:そこまで出ていない。恐らくベースやキックとの兼ね合いか。
・中低域:ワンポイントで音色全体の重さを担っている。
・中域:「広い範囲にまんべんなく」というよりはピンポイントで複数突出している他方、1kHz付近に深い谷。
・中高域:中域同様に広い範囲というよりは複数突出しているが、凡そ4.5kHzを境にかなり落ち込む。
・高域:殆ど出ていない。よほど低域が出ている場合に釣り合わせるために出している印象。
・機材が変わっても共通するこの特徴が、Tak氏の個性的な音色の太さや魅力のキーかと考えます。Tak氏の音色に対する個人的なイメージとしては『骨太、筋肉質、漢らしい、ギュッと詰まった』(逆は『軽い、浮ついた、うるさい』)、擬音で表すと『ギュ、キュ、』(逆は『シャリ、クシャ』)のような表現になります。この特徴的な中域が無い場合、正にドンシャリに聞こえます。
【示唆】
・上記より得られる示唆としましては、バッキングにおいては「中低域の90~170Hzから1箇所、及び中低域は600~650Hz辺りをピークとし、他の中域~中高域でバランスを適切に」取れれば、Tak氏の音色っぽい、かっこ良いメイン歪 / バッキングの音色が作れるのではないでしょうか。
この場合のカッコよさとは、『ハードロックにおける6弦ギターで、ディストーションで低音寄りや開放弦を用いたリフを弾く』こととします。
・音色コピーの過程で強く感じたのは「エレキギターのメイン歪は、中域の出方が一番大事、キャラクターや個性を決める」という点でした。特に600~3kHzの間からピークを変えると、音色の印象がかなり変化しました(他の帯域は味付け程度に感じるほどです)。
・注意点としては、中域をまんべんなく出すのではなくピンポイントにすることが不可欠です。中域を絶え間なく出力すると、すごい固くて耳障りだけでなく、バンドに混ぜるとVoや他楽器の邪魔になり、バンドアンサンブルどころではなくなります。フレーズに限らず音色においても「どこを、何を強調/目立たせたいか」、それ以外の部分は引っ込めるのが重要です。
比較分析、コピーにあたり
【比較分析】
上記傾向分析を踏まえ、ここでは各年代の特徴を比較分析し、音色コピーへのヒントとします。
1. ROCKMAN(1988年)…低域抑え目、中域山あり谷あり
・総括:まさにROCKMANでしか出せないと言われる通り周波数スペクトルの高低差が激しく、特徴的な波形になっています。
・中低域ピークは3者の中で一番中域寄り(170Hz)
・中~中高域にかけて、高低差が激しい。1.2kHzあたりが深い谷
・3kHzあたりに中高域一番のピークを迎えつつも、6k以降が急に落ちる
※ROCKMAN音作りの詳細はこちら
2. Peavey(2001年)…ドンシャリ、低高多め
・総括:図や数値からも解る通りまさにドンシャリ。低域、高域共に強い帯域が見られます。
・低域のピークが3者の中で一番低く(95Hz)、400Hz辺りまでの減衰が緩やか
・中域は聞いた印象以上に存在し、Tak氏らしい600Hzのピークは健在
・中高域が4~5kHzであまり落ちずに、高域の6kHzも出ている
※Peavey音作りの詳細はこちら
3. Bogner(2003年)…中~中高域マシマシ
・総括:バランス良い印象です。低域もありながら、ポイントポイントで中域が出ており、全体的には高域にいくにつれてなだらかに減衰。割とROCKMAN似の印象を受けます。
・中低域は130Hzを中心に200Hzあたりまでは多め。
・中域のピークは650Hz。
・中~中高域は、上述の650Hzを超えない程度に複数ピークがあり、ピークはなだらかに減衰傾向。この中高域あたりが650Hzを超えないため、抜けもありつつマイルド(中域強め)に聞こえるのかと思います。
※Bogner音作りの詳細はこちら
・本記事紹介のプリセットは、下記よりダウンロード可能です。(2020/4/25 追記)
B’z メイン歪 (Axe-FxⅡ)プリセット
取り組み結果(音源)
・取り組み結果を音源にしました。上記のROCKMAN / Peavey / Bogner使用の原曲に、自分の演奏を重ねでギターの反対に30%ずつ左右に振った動画になります。また、前回までの記事から、各曲に合わせてAxe-Fx上で音色をチューニングしてます。
・今回はバンドアンサンブルでの音色としてを確認するため、原曲に重ねました。ギターを独りで弾いて気持ち良いと感じる音色と、バンドアンサンブルで聞いて気持ち良いと感じる音色は、必ずしもイコールではない事が多いです。ギター単独で聞く場合は中低域強めやドンシャリだと気持ち良いですが、バンドアンサンブルでは、他楽器とのバランスが大事です。
【チャレンジ環境】
・チャレンジ環境は、今までと変わらず下記画像の通りです。
【音源動画】
※Peaveyのトーンコピーが満足できないので、ROCKMAN及びBognerを仮版として掲載します。
【動画構成】
0:03 ~ …TIME (ROCKMAN)
1:39 ~ …RUN (ROCKMAN)
0:XX ~ …準備中 (Peavey)
0:XX ~ …準備中 (Peavey)
3:06 ~ …アラクレ (Bogner)
4:35 ~ …儚いダイヤモンド (Bogner)
【補足】
・ノーマライズ(音量正規化)はしておりますが、音量にはご注意ください。
・演奏後は音量調整のみ行い、EQ等の加工はしてないです。>
【波形画像】
ROCKMAN 音色コピー波形(RUN演奏時)
Peavey 音色コピー波形(準備中)
Bogner 音色コピー波形(アラクレ演奏時)
今回のまとめ、次回について
【総じて】
・分析と示唆についてはツイッターに先行記載した通りですが、エレキギターは改めて中域の楽器、兎にも角にも中域が重要と認識しました。音色の太さを求めるなら低域かと思っていましたが、実際は中域をどう形作るかで大きく変わります。シャリシャリしても、低音が足りないと感じた場合でも、中域を出すことで音がしっかりして、張りが出ます(もちろん、しっかりしたピッキングも不可欠です)。
・正しい目標情報と現状分析が出来れば、同じ機材を揃えなくても音色はかなり近付けられると考えます。最初は各帯域の特徴があまりよく解らなくても、100時間も取り組み続けられれば、ノウハウがついて来るはずです(イコライザーに限らないのでしょうが)。
今回も、ROCKMANを最初に作成したノウハウでBognerを作り、BognerノウハウによりPeaveyを作り、そのノウハウで更にBognerやROCKMANを修正…という流れを毎日少しずつ繰り返すことで、耳がよくなり、ノウハウを蓄積しました。
また、これで完成ではなく、あくまで元パッチとして使用します。今後は曲や役割毎にチューニングしていきます。PEAVEYはあまり理解出来ていないので、精進が必要ですね…。
・イコライザー調整で難しいのは、近い帯域で山と谷を両立する点でした。例えばROCKMANは990Hzにピークがあるにもかかわらず、1kHzが大きな谷になっている点等です。これは、PEQが複数ないと実現厳しいと痛感しました。また、やはりSM57を使った音色作りは、シャリシャリ、クシュクシュ感が非常に取りづらくて難しいと感じました。E906の方が耳に心地よく、使いやすい印象です。
・リードトーンはまた別の特徴を持っていると考えています。アンプの設定も変わるでしょうし、役割が変わるのでPA処理も音量含めて変わると考えています。改めて取り組みたい課題です。
・これらの特徴を理解して活用できれば、BognerベースにROCKMANっぽさを足したような音色を作れたり、ひいては自分好みのチューニングを一層的確に可能なはずです。また、宣伝ではないですが、Axe一台でバッキングはBogner、ソロはROCKMAN、重い曲ではPeaveyみたいな使い分けが比較的容易に可能です。またB'zに限らず他アーティストの音色も同様の手順で作成可能と考えます
・個人的にはBognerの音色が一番好きですが、ROCKMANの音色も結構好きなのは、音色(波形)が割と似ているからかと、得心が行きました。
【次回について】
・他年代の音色分析、Axe-Fxと他社高機能機材との特徴比較、B’z / Takの機材情報、等を考えています。
ご覧頂きありがとうございました。
ではまた。
ひいろ
コメント
大抵のミニイコライザーでは±12dBだと思うんですけど、数値だとー70とかありますけど-70まであるものってあるのですか?
関口陽太さん
コメントありがとうございます。
質問に素直に回答しますと、僕も70dBも補正可能なイコライザーは聞いたことが無いです。
恐らくグラフの左縦軸についてのご質問かと思いますので、補足いたします。
・先ずグラフにつきましては、0dBを基準としています。その「基準の音量 = 0dBから、どれ位の音量差があるか」を示すグラフになっています。
詳しくはこちらの方の記事が理解に役立つと思います。
http://monikoaudio.blog129.fc2.com/blog-entry-35.html
・ご存知でしたら恐縮ですが、イコライザーの±12dBは補正値です。
また、dBは対数ですので+70dBも補正した場合はずっとは聞いてられない程うるさくなりますので、そこまではイコライザーに不要かと思います。
dBの目安は、こちらの方の記事が理解に役立つと思います。
https://kazuharushi.com/decibel-otonoookisa
質問に答えられていますでしょうか。
(僕の勘違いかもしれませんが、当ブログでは本名でなくともコメント可能です。)
dBというものは理解出来ました。では、イコライザーで同じ波形を±12の範囲で作るであってますか?
こういいのは苦手で。。。
苦手にもかかわらず、コメントありがとうございます。
ご認識の通り、ご自身の音色をイコライザーの範囲で加工することです。
詳しくは下記記事2点をご参照ください。
・イコライザーの使い方、人の聞こえ方、各帯域の特徴
https://tone-like-bz.com/entry/how-to-tone-copy-equalizer
・スペクトル分析の手法をご紹介! 音作りの効率とクオリティがグッと上がります!
https://tone-like-bz.com/entry/how-to-tone-copy-spectral-analysis