【How to 音色コピー】スペクトル分析の手法をご紹介! 音作りの効率とクオリティがグッと上がります!
こんばんは、ひいろです。
前回は、ライブのステージ上でモニターに役立つカスタムIEMについてご紹介しました。
【便利 / お役立ち】B’zのお二人もご使用のカスタムIEMとは? ステージ上でモニターするならこれ!
今回は音作りに戻り、正確な情報を手軽に入手して、音作りの効率とクオリティをグッと上げる手法を紹介します。
(画像等は準備でき次第、順次追加していきます)
本記事の背景、目的
【Takトーン実現に向けて】
・以前から度々記載していますが、使用機材を知るのが目的ではなく「ライブで如何にTakトーンを実現するか」というアプローチを本ブログでは目指しています。そこで、音色コピーにあたり「どうすれば、(Tak氏と同じ機材を揃えるのではなく)ライブハウスによくある機材や、市販機材でTakトーンを実現していけるか」を追究していきます。
【音作りに関する正確な情報を把握】
・何をするにしても正しい情報は大事です。音作りにおいては「目標及び自分の音色の正しい情報」ですが、これが無いと目的地と現在地を見失って道に迷っているのも同然です。
・それでは音色の正しい情報とは…機材情報? 耳で聞くものでしょうか? 僕は「周波数スペクトル」と考えます。ギター~マイクまでの機材を揃えても、最終的なPA処理等は再現し切れません。しかし、最終的な出音 = 僕達が聞いて「こういう風にカッコいい音を出したい!」と感じている音色を分析できれば、それが音色の正しい情報と考えます。ここでは、正確な情報の入手手法として、スペクトル分析 = 音色の見える化を扱います。
Wikipedia 『周波数スペクトル』
スペクトル分析 / 音色の見える化とは
【耳での正確性確保は難しい】
・僕も少し前までは耳で聞いて試行錯誤していましたが、耳での確認は、聞く位置 / 環境 /音量等によって聞こえ方変わるため、正確性の確保が非常に難しいです。比較時にも先に聞いた音色を完全には覚えていないので、不確かになる点が課題でした。
聞こえ方の違い…【How to 音色コピー】イコライザーの使い方、人の聞こえ方、各帯域の特徴
【音色の見える化で正確性確保】
・そこで、音色を客観的に捉えられる手法がないか勉強していたところ、スペクトル分析に辿り着きました。スペクトル分析により、音色を見える化(数値化、グラフ化)することにより音色を客観的に把握 / 比較することが可能です。 目標と自分の差異を正確に掴むことで、音作りの効率とクオリティがグッと上がります。今の技術であれば割と手軽な手法かと思います。
・本ブログでは特別な機材、時間や手間をあまり掛けずに「っぽい」を実現していくポリシーのため、傾向把握が達成基準です。本格的に行う / 精度を求める場合はオーディオアナライザー等の機材や環境が必要ですが、物によっては数十万円、メンテナンスや校正費もありコスト等の面で見送ります…。
オーディオアナライザについて…木村 哲 『私のアンプ設計&製作マニュアル 測定器その6 (歪み率の測定)』
オーディオアナライザの例…Sound House 『NTI ( エヌティーアイ ) / XL2 オーディオ&アコースティックアナライザ』
目標音色の分析
・先ずは目標音色の分析手法を紹介します。目標は、アーティストの音源での音色とします。
・可能なこと:音色の見える化、数値出力、他(使用ソフトにより異なります)
・必要なモノ:PC、音楽編集ソフト、音源
・手順:1. 目標設定 → 2. 探索 → 3. 切り取り → 4. 分析
・ここでは、音楽編集ソフトは無料のAudacityを使います(導入方法等は下記や他ページをご覧ください)。他のソフトでも構いません。以前ご紹介したB’z 『BIG MACHINE』の音色コピーを例に紹介します。
Aviutlの易しい使い方 『Audacityの簡単な使い方と導入方法を解説』
Audacity 『Audacityマニュアル』
【1. 目標設定】
・先ずはコピーしたい音色を決めます。例では「B’zにおけるBogner使用楽曲のうち、メイン歪 =バッキングトーン」としました。
【2. 探索】
・目標で決めた音色「のみ」が鳴っている音源を探します。例では、いくつかありましたが結果的には"CHANGE THE FUTURE"のアウトロ部分(3:46~あたり)を採用しました。ここで目標の音のみが鳴っている音源を探せるかが大事です。他の音と混じっていると、目標の正確な情報が取れません。そのために、以前にTak氏のギター音だけをピックアップしました。
【How to 音色コピー】Tak(B’z 松本孝弘)氏のギターだけの音源ピックアップ
【3. 範囲指定 or 切り取り+別で貼り付け】
・音源をAudacityに取り込み、目標の音色部のみを「範囲指定、もしくは切り取り+別で貼り付け」をします。ポイントとしては、他の音(残響音等含む)が含まれないようにすることです。他の音が入ると、分析結果が変わってしまいます。
・音源取り込みは、ドラッグ&ドロップで可能です。
・範囲指定の場合は、「選択ツール」を選択後、マウスで範囲指定してください。確認が一度だけで良いのであれば、範囲指定が便利です。
・切り取り+別で貼り付けの場合は、上記と同じくマウスで範囲指定した後、新しいAudacityを起動して貼り付けてください。切り取って保存しておくと、後で同じ箇所を見たい時用に完全に同じ範囲を何度も使えるので便利です。音作りが1日で終わる事が少ないので、僕はこちらの手法です。
【4. 分析】
・目標の音色を範囲指定、もしくは 切り取り+別で貼り付けした後に、その部分をスペクトラム分析します。Audacityの操作としては、対象を範囲指定した後に「解析(A) →スペクトル表示(S)」です。ショートカットキーは「Alt → A → S」、頻繁に使う方は覚えておいた方がベターです。
・分析結果の見方は、カーソルを合わせた部分の帯域とdBが表示されます(①)。また、カーソル付近のピーク(②)が別で表示されますが、多少ズレる場合があります。
・僕の分析設定は下記(③)の通りですが、設定を変えると波形なども全然変わります。お好みによってチューニングしても良いかと思いますが、自分の音色の分析と同じ設定しないと比較不可になります。
(設定部、他拡大)
・アルゴリズム:スペクトラム
・サイズ:1024
・関数:矩形window
・軸:対数周波数軸
Wikipedia 『窓関数:矩形窓』
・右下の「書き出し(E)」(④)を押すと、txtファイルで数値出力可能です。
・この分析結果を確認することで、容易かつ正確に音色の全体傾向、ピークや谷を把握可能になります。
自分の音色の分析
・自身の音色の分析手法を紹介します。こちらは、いくつか手法があり、下記表で比較します。
・可能なこと:音色の見える化、数値出力、他(使用ソフトにより異なります)
・必要なモノ:PC+音楽編集ソフト or スマホ+アプリ、自分の音源
・手順:1. 録音 or 演奏 → 2. 分析
パターンA. PC(マイク)
・コストはそれなりに掛かりますが、分析精度及びライブでの再現度が高いです。僕がこの手法を採用している理由は、ライブ本番と環境を音作りの環境を同じにすることで、ライブでの再現度を高めるためです(ライブでMarshallキャビネットから出力、マイクで収音します)。
・注意事項としては、使用するマイクによって音色が変わるので、ライブ本番と同じマイクでの収音が再現性を高めるポイントです。
【比較】マイク SM57、E906、Galaxy Note8、HDR-MV1 (B’z 孤独のRunawayにて)
パターンB. PC(ライン)
・分析精度が高く、オーディオインターフェースもしくは(アンプ)シミュレーターがあれば可能です。聞いて確かめるプロセスにおいて適切な音量で確認できるならば、ライブでの再現度も確保出来ると思います。
【AB-1. 録音】
・パターンA及びBの分析は、「目標音色の分析」とほぼ同じです。追加で必要になる録音作業を、まとめて説明します。
・録音設定は、マイクアイコンの右側から録音する機器を設定します(①)。「モニターを開始」(②)を押すと、録音前に録音メーターで音量を確認できます。
・録音は、上記設定後に「録音(R)」を押した後に演奏、録音を止める際は「停止」を押してください。ショートカットキーとしては録音は「R」、録音終了は「スペース」です。その後の作業は「目標音色の分析」と同じです。
・パターンC. スマホ
・スマホがあれば他の機器不要で手軽ではありますが、分析精度や再現度が低めです。理由としては、スマホはマイク周波数レスポンスが公開されていないため、どのように補正されるかが不明なためです。
・スマホの分析アプリは無料のAdvanced Spectrum Analyzer PROを使います(他のソフトやiPhoneにもあるアプリでも可です)。
【C-1. 演奏】
・アプリ起動後に、スマホのマイクを適切な位置に置き、停止ボタン(ll)を押すと波形を一時停止できます。右の3本線(三)を押して「Screenshot」を押せばフォルダ(ASAPというフォルダが新規作成されます)に保存されます。なお、音源とスマホマイクとの距離によって音が変わりますので、ご注意ください。
デジマート・マガジン 『ギターとアンプの距離~立ち位置によってギターの音はどれだけ変わるのか?』
【備考】
・目標と同フレーズを弾いて波形を調整しても違うフレーズを弾くと低音域等が出過ぎるケースが散見されましたため、最終的には耳による確認も必要と思われます。ただし、聞く際は等ラウドネス曲線等による聞こえ方の違いにご留意ください。回避策としては、パワードスピーカー等でしっかり音量を出すこと等があります。
今回のまとめ、次回について
【今回のまとめ】
・傾向把握を目的とした、音色のスペクトラム分析の手法を紹介いたしました。正確な情報さえ入手できれば、後は分析結果を活用して音作りしていくだけです。この分析手法を活用した音作りは、別記事にて紹介予定です。
・耳で聞く事に加えて、見える化することで目標との差異を一層正確に把握できます。差異を正確に把握することで音作りの調整が早くなり、調整後に似ているかどうかも判別しやすくなります。
・音作りにおいて僕はキャビネット出力+マイクの手法を採用しています。一線のアーティストも手間の掛からないラインやシミュレーターを使っている時代に、B'zはキャビネット出力+マイクでレコーディングやライブをしていますので、何か理由があると考えています。
【次回について】
・他年代の音色分析、Axe-Fxと他社高機能機材との特徴比較、B’z / Takの機材情報、等を考えています。
ご覧頂きありがとうございました。
ではまた。
ひいろ
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